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【 連載コラム 】

副作用と有害事象

本連載では「そもそも安全性って何?」というところから分かりやすくお伝えしていく主旨ですが、安全性を語るうえで避けて通れない用語の定義について、そろそろ触れておきたいと思います。

2016-02-08 11:42

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副作用と有害事象

本連載では「そもそも安全性って何?」というところから分かりやすくお伝えしていく主旨ですが、安全性を語るうえで避けて通れない用語の定義について、そろそろ触れておきたいと思います。

私たちは普段の日常生活で「薬の副作用」という言葉を使うことがあります。薬によって起こされる(悪い)症状や疾患、というニュアンスで使われますね。しかし安全性の仕事の中で「副作用」と言った場合は、微妙に定義が異なっています。
安全性では、(因果関係の有無に関わらず)薬物が投与された後に生じるあらゆる好ましくない、意図しない出来事を「有害事象(AE:Adverse Event)」と呼びます。

そして、有害事象のうち薬物との『因果関係が否定できない』ものを「副作用」と言います。この狭義の「副作用」は「薬物有害反応(ADR:Adverse Drug Reaction)」とも言います。

『因果関係が否定できない』とは、因果関係が不明なものも含まれ、明確に「否定できる」と判断されるもの以外は、全て対象になります。

有害事象は有害?

有害事象は、薬物との因果関係に関わらず、薬物を投与された後に起こるあらゆる好ましくない、意図しない出来事です。ですので、ある薬を飲んでいて、たまたま交通事故に巻き込まれて骨折した、という場合も、骨折は有害事象になります。

一見“有害”ではないことも有害事象と扱われることがあります。意図しない出来事として、高血圧の薬を飲んでいたら頭髪が生えてきた、ということがありました。高血圧の薬としては意図しない出来事なので、頭髪が生えてきた、というのは有害事象になるわけです。海外では、後にこの副作用が薬効として認められて育毛剤として承認されました。

実は大変深い、副作用・有害事象の定義

さて、入門編としては、副作用と有害事象の定義は上記の説明で充分なのですが、何をもって副作用・有害事象とするか、というのは専門家の間でも議論になるほど、大変深い問題でもあります。

簡単にまとめますと、「個別症例」として報告されてきた段階のものは有害事象になりえますが、『因果関係が否定できない』といって「副作用」とするには早いのです。

『因果関係が否定できない』にも大変幅があり、情報不足や不明、といったケースから、極めて疑われるものまで、これを一括りに扱うのは乱暴だ、データとしてノイズが大きく大切なものが拾えない、という意見があります。「個別症例」として報告された段階では「副作用」ではなく「副作用の疑い(Suspected ADR)」になるわけです。

そういった有害事象のデータが集積されて、ノイズが選別され、薬剤との『因果関係が否定できない』ものについて、「副作用」として扱われることになります。

次回は、いよいよ安全性情報の流れについてご説明いたします。


※ 「有害事象(AE:Adverse Effect)」と記載致しましたが、Adverse Effectは非臨床での「有害反応」を指すので、正しくは、Adverse Event でした。ここに訂正させていただきます。(2016/2/22)