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【 連載コラム 】

知るは楽しみなり

はやぶさ2号は、今年2月に計画通り小惑星リュウグウにタッチダウンして表面の試料を採取したようです。

2019-04-10 09:42

知るは楽しみなり

はやぶさ2号は、今年2月に計画通り小惑星リュウグウにタッチダウンして表面の試料を採取したようです。

その後の観察から、リュウグウには「水」があることを発見しました。
先週は上空から弾丸を打ち込み、人工的にクレーターを作ることに成功しました。来月はこのクレーターを利用してリュウグウの地中深くから試料を採取する計画です。

はやぶさ2が帰還するのは来年末になるそうです。
昨年末にリュウグウの軌道を周回して撮影した表面の写真や、表面に到着した小型探査機からの写真には惹きつけられました。持ち帰った試料の分析結果まではさらに時間がかかるでしょうが、どのような発見があるのか大変楽しみです。

世界の宇宙探査計画には月の水、火星の生命、木星の衛星の火山活動探査などがあり、さらに興味を惹かれます。宇宙探査の端緒ともいえる望遠鏡はオランダで1608年に発明されたと言われています。1609年にはガリレオが望遠鏡を自作し、月や惑星の観測を始めています。

一方、宇宙とは逆にミクロの世界の探査も、未知の情報を知る、或いは目の当たりにする楽しみがあります。
その端緒となる顕微鏡は、望遠鏡を発明した眼鏡職人の近所の眼鏡職人が1590年に発明したと言われています。当初の顕微鏡はレンズの質や倍率が低く、サイエンスへの利用には向いていなかったそうです。しかしその後は光学の発達とともに改良が進み、今では光学顕微鏡によってヒトのほぼすべての細胞を肉眼で観察できます。さらに、細胞の内部に存在する細胞小器官も観察できます。

1966年に日本で公開された映画「ミクロの決死圏」は、脳内出血を発症した科学者の病巣を内部から治療する話です。数名の医者や科学者が潜航艇に乗り込んで赤血球よりも小さなサイズに縮小され、頸動脈から体内に入り、様々な生命現象に遭遇する映像には夢中になったことを覚えています。例えば、リンパ管の中で潜航艇の外に出た隊員にスライムのような物体が張り付くシーンがありました。細胞にしてはサイズが小さいのですが免疫応答と想像できます。ミクロの世界は光学顕微鏡で観察できるので、映画を製作したスタッフにとってはイメージを作りやすかったことでしょう。

それから52年、2018年に公開された米国のヒーロー映画では、主役はさらに縮小され、量子の世界で活動する様子が描かれています。量子の世界とは、サイズの点では甚だあいまいな言葉ですが、原子のサイズぐらいと考えられます。
原子はすべての物質を構成する最小単位、という概念は古代ギリシアからあり、19世紀の初めには具体的な物質として考えられるようになりました。20世紀に入って、原子は原子核と電子で構成され、原子核は陽子と中性子から構成されていることがわかりました。(これには例外があります。現在、100種類以上の原子が発見されており、一番小さな水素原子の原子核は陽子1個です。)原子の直径は、多くの場合1Å(オングストローム)程度、すなわち1000万分の1mmであり、原子核は原子の10万分の1程度です。電子はさらに小さく直径は不明で、質量は陽子の約2000分の1です。

これまでに原子の構造はいろいろと考案されました。太陽の周りを惑星が回るようなイメージで、原子核の周りを電子がまわるのはボーアの原子模型です。この模型は様々な観察結果を説明できましたが、現在では、電子は原子核の周りを「回る」のではなく、「出没する」と表現したほうが近いと考えられています。電子の動きは極めて素早いうえに連続ではありません。電子の様子を無理やり想像すると、原子核の周辺に雲のように存在するようです。そこで電子雲と呼ばれています。原子は電子顕微鏡である程度の大きさとして画像にすることはできるのですが、詳細までは見えません。量子の世界の映像の製作には相当苦労したのではないかと思います。